ウェブ

ウェブ (Web) は当初ワールド・ワイド・ウェブ (WWW: World Wide Web) と呼ばれていました。世界中のウェブページと、それらの間に網の目のように張り巡らされたハイパーリンク (hyperlink) を蜘蛛の巣 (web) になぞらえてそう呼んだのが始まりです。ウェブページを記述する人工言語が HTML (HyperText Markup Language) で、その名が表すとおりハイパーリンクと不可分です。

ハイパーテキスト (hypertext) はコンピュータの発明後にテキスト (text) を超える (hyper-) 存在として構想されました。テキストは基本的に最初から最後まで順に読むものですが、ハイパーテキストは好きな順番で読めるようにハイパーリンクを備えています。ですからウェブは最初から様々なハイパーテキストが無数のリンクでつながるようにデザインされていたと言えます。そしてその通りにウェブは文字通り網の目のようなハイパーリンクでつながりながら大きくなってきました。

最初の頃のウェブには、辞書・目録や、企業・組織の情報発信が多かったのですが、個人サイトが増え、ブログによって裾野が広がり、徐々に個人の情報発信が増えてきました。SNS (Social Networking Service) の登場によって、ウェブページへの情報発信が必ずしも(「公にすること」「出版」という意味の)パブリッシュ (publish) を意味しなくなり、身近な人々へ向けた日記やつぶやきも増えてきました。そしてモバイル端末の普及、スマートフォンへの進歩にともない、個人によるリアルタイムな情報発信も増えてきました。

このように、ウェブ上の情報は多様で豊かになってきました。情報と情報がつながるだけでなく、人と人もつながることが顕著になってきました。ウェブのソーシャル化です。今後もウェブは人と人をつなげていくでしょう。

ウェブのソーシャル化で問題になるのがアーキテクチャです。ウェブのユーザーは、誰かがデザインしたアーキテクチャのルールに従って利用することしかできません。そのルールは利用規約といった文章や、習慣やマナーといったものだけでなく、ソフトウェアとしてプログラムされています。ルールを破る自由が予め奪われているわけです。それには秩序だった情報社会を作れるという良い面もありますが、提供者の都合の良いように人々の行動を制御できるという悪い面もあります。

もはやウェブという情報空間のアーキテクチャが、その多くのユーザーにとって物質空間の建築と同じくらい重要になっています。したがって、ウェブを開発する人々は、これまでのゴールドラッシュ的狂騒の気分で経済的合理性(有り体に言えばカネの論理)だけを追求するのではなく、ウェブによって社会をよりよくすることも追求しなければなりません。アーキテクチャにどのようなルールを実装するかという問題は、単に「どうすれば利益が最大化されるか」と問うだけではいけません。「どうすれば社会がよりよくなるか」という問いも同時に問われなければなりません。

まとめ

ウェブは本来的に情報と情報をつなげます。ウェブの発展に伴い、人と人がつながるようになりました。ウェブのソーシャル化にともない、アーキテクチャを設計・提供する主体の責任は増しました。それと同時に、ウェブは以前よりずっと社会の役に立てるようになりました。ウェブは仮想の存在ではなく、社会の欠くべからざる一部になったのです。ウェブは仮想ではなく現実です。したがって現実の物質空間で求められるような責任も求められます。それはウェブ開発に携わる人々にとって社会的な責任を果たすチャンスが到来したとも言えるのです。

補遺

ウェブ開発 (web development) という言葉は二つの意味で用いられます。狭義にはソフトウェア開発を指しますが、広義には事業開発を指します。後者のウェブ開発は、国土開発や都市開発のニュアンスです。建築や都市の開発会社(デベロッパー)は必ずしも建設会社(コンストラクター)ではありません。

ウェブ開発者 (web developer) という言葉も狭義ではエンジニアを指しますが、広義ではデザイナー、プランナー、ディレクタなども含みますし、個人だけでなく企業も含みます(「マンション・デベロッパー」が法人であるように)。社内にエンジニアがいるかどうかは問題ではありません。都市開発会社が建機を持たなくても開発会社であるように。ウェブ上の事業を構想・投資する会社はウェブ開発会社 (web developer) です。

数々のスタートアップによるイノベーションがウェブ開発において重要でした。今後は老舗企業や大企業もウェブ開発の主要な担い手になっていくことでしょう。ウェブは老舗企業や大企業にとっても開発するのに相応しい空間になってきました。

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